相沢さん増殖や藤村くんメイツを描いた敷誠一のTwitter漫画。1話1話がやけに短いと思った。2019年1巻の作品。過去作品のピックアップで藤村くんメイツを取り上げた際、コメントもらって積ん読していたのを思い出して読んだ。
そんでこれ、フラグブレイク漫画なのね。フラグブレイクはラブコメの中でも逆張りジャンル。ないことはないが、個人的にはあまり歓迎しないんだよなぁ。ほらもうこれ、予知能力を使ってフラグブレイクをし続けるとか、第一印象でこんなに応援したくならないラブコメヒロインおるか?とか思ってたらフラグブレイクの理由がまぁまぁ納得感あって笑った。
以下1巻感想。
フラグブレイクという特殊ジャンル
本作を読んだ時、そういえば未来を知る女がフラグブレイクしまくる作品があったことを突然思い出した。
この作品は正直あまり印象がよくない。意識的にフラグブレイクされたら手も足も出ない。まぁやってることのび太がジャイ子にやったことと同じなんだが、少なくとも男→女では現代的な倫理観ではギャグでも許されない気がする。実際、今でもフラグブレイクがメインのテーマになっているラブコメは男向けでもあるにはあるが、だいたいどれも無頓着、朴念仁によるものであって、意識的にフラグを折る、というのは見ない。
他の朴念仁系フラグブレイク漫画貼っとく。これらは悪印象ではない。
しかし本作は朴念仁ではなく、予知能力を持ったヒロインが意図的にフラグを折っていく逆のび太形式であって、さてこれは……と思いながら読み始めた。
約束された大勝利をほどほどの勝利に
しばらく読んでいると、ヒロインは決して彼のことが嫌いなのではなくむしろ好きだとわかる。それでもフラグブレイクする理由は、イケメンの彼を無下にしようとしているのではなく、付き合ってしまうと一年とたたずに結婚して子供作っちゃうというヤンキーカップルロード一本道であることを危惧したからだということで、納得。そうだね、それは困るねリアルに。高校生にもなったらわかるわなそれは。はい。なんか納得。
この理由付けは、うまいことハーレムの理由付けを出来ている作品を読んだときのような不思議な満足感があり、「なるほどなぁ」という妙な感心をしてしまった。
うまいことブレーキをかけることができれば、20代後半くらいの、現代的には比較的ちょうどよさそうな時期に結婚ということで、それがわかっているなら、まぁそっちを選びたいよね。
つまり彼女は、彼との理想の未来を築くために、あえて感情を抑えてフラグブレイクをしている、というわけだ。うーん、これは逆張りのさらにまた逆張り。この姿は確かに愛らしいかもしれんね。実際、ちょっと心細い時に偶然出会うとかのフラグは「ずるい」と思いながら堪能してたりね。
ブレーキとしての不完全予知能力
また面白いのは、ヒロインの予知能力はかなり不完全であることだろう。予知のタイミングを制御できない。なので、サプライズなど予知したくない時にも予知してしまう。そうかと思えば、予知したい時に予知できない。予知を変える行動はできるが、その行動がどんな結果をもたらすかは必ずしもわからない。なので、時にフラグブレイクをやりすぎて、「完全に折れてしまった」と思い悩むこともある。決して完全無欠ではない。
また、自身の予知能力を彼に教えているらしいこともポイントだろう。彼からすれば、妙にフラグを折られているものの、それにも関わらず付き合えているということが、約束された勝利を思わせる。しかし確証があるわけでもない。この緊張感はほどよくて案外楽しいかもしれない。
バランス感覚
ということで、フラグブレイク漫画ではあるものの、作者さんらしいバランス感覚が発揮されて、いつもどおりのマイルドな味わいになっている。一点気にかかる点があるとすれば、ヒロインに重きが置かれすぎて、彼のことがよくわからないところだろうか。まぁでも元がTwitter漫画、つまり1話が短いので、仕方ないのか。今後変わっていくのだろうかねぇ。
コメント
コメント一覧 (2件)
この作品、結ばれることは決まっていてヒロインも相手役に満更でもないんだけれども、今は不味いのでほどほどのトコで留めておこうとするがなんだかんだで流されてしまう……。
というシチュエーションがたまらないんですよね。
ページ数が短いweb漫画の特性を良く活かした構成も上手いと思います。
あと決してエロ売りしていないのに、そこはかとなく描写にエロさを感じる…清楚なエロとでもいうんですか、それが良かったです。
本作のフラグブレイク理由は非常にうまいと思いました。相沢さん増殖もそうですが、現代倫理との折り合わせがうまい作者さんだと思います。
Twitter漫画は一期一会を意識してか、話が堂々巡りで進まないタイプがあるように思いますが、本作はちゃんと進んでいるようでよかったです。
直接的にエロくはないのですが、色気はありますね。