うぐいす祥子(ひよどり祥子)の短編集。この素敵な表紙は収録されている短編の一つ「薔薇の婚約者」なんだが(表題と違う)、ぶっちゃけ表紙詐欺だろう笑。
アオハル掲載の短編集である「フロイトシュテインの双子」よりもラブコメっぽい話が多い気がする。以下ネタバレ感想〜。
容赦なく死ぬ美少年と美少女たち
全体的にガッツリホラーなんだけれど、なかなかどうして、ラブい話が多いじゃないか。同時に短編らしくどんでん返しも多いので、最後まで油断できない。成就するタイプのラブではない。っていうか、死ぬ。しかも、惨たらしく。美少年と美少女がバタバタ死んでいく様は爽快感すらある。
中でも「血骨の謝肉祭」は表題になっているだけあり読み応えがある。ボーイ・ミーツ・ガールの定石を嘲笑うかのような構成が素敵だ。頼りなかったシンちゃんが、ユメを助けるために覚醒するシーンなんてすごく素敵なのに、かっこよくユメを助けたと思ったら、実はそれはユメの実の家族、家族を殺されたユメは怒り、わけもわからないままシンちゃんユメに殺される。あの覚醒シーンはなんだったんだ。そして最後の、「ただいま養殖技術も研究中!」がたまらんな。蜘蛛女vs蛇女のラスト「足が一本もないなんて気持ち悪い!」といい毎回オチで笑わせてくるんだ。
人を喰ったような話の展開が続き、ラブい要素は悉く裏切られるが、唯一表紙の話である「薔薇の婚約者」は結果的に恋愛成就する…が、この話の場合は成就すること自体がある意味裏切りである。というか表紙の女・スミレが実はクソアマなのは良いとして、表紙の男に至っては出てこないってどういうこと笑。
そもそもスミレの目的自体が、最終的には結婚云々よりも蘭子に勝つことになっているという。この作者さんの描く女の戦いは昼ドラっぽくて好きだわ。
とにかく出てくるやつはだいたい死ぬか、あるいは実はラスボスでしたオチが多いけれど、「しあわせな悪夢」のハルカは無事に生還する。生還するのだが、アイドルを目指しているのに自分の歌が酷すぎてファンが大量死するという悪夢を見せられて現実を痛感して夢を諦めるという展開、実は本作で一番残酷なんじゃなかろうか。
そんな感じなのだが、絵が耽美で男女の機微に絡む話が多いからか、この人のラブコメ読んでみたいと思わされる不思議。
それにしても、特に美少女に容赦がない漫画であった。「あなたくらいの美少女なんて世界にいっぱいいるものね」蓋し名言。
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