筒井大志, ぼくたちは勉強ができない 第10巻, 2019
相変わらず基本祝福ムードの世界観が俺によし。ニヤニヤするモブに感情移入する漫画。
成幸とヒロインとの関係を見ると、文乃が抜きん出ているね。一方、リズは進展らしい進展がなく、うるかに至ってはむしろ状況的に不利になった感じ。
文乃だけ強い。なにしろ話がシリアスモードに突入しようとしている。しかもこれ多分長引くやつ。テーマ的にも非常に重たい問題で、面白いのだけれど、一歩間違うと作品の空気自体が取り返しのつかないことになるだけに、先の展開がやや不安……どうなるんだろうか。
先生は癒やし。以下9-10巻感想。
桐須先生は今日もあざとい
桐須先生は最高やね。こんな先生いたらいいのに。いや実際いたら好きになれないかもしれないけど。割と高圧的だし。漫画だと可愛いけどね。
生徒の少女漫画に影響される桐須先生今いくつ。生徒はともかく、教職の人間が教師♀と教え子♂の少女漫画を買ってしまうのは色々ダメな気がします先生。そこにリアリティはないです先生。そして先生は残念ながら少女漫画ではなく少年漫画のラブコメヒロインなので、ハプニングでお姫様抱っこされるのではなく、男の顔を尻にしくことになります先生。
倒れた桐須先生のお尻が成幸の顔(後頭部だけど)にいったのは、少女漫画と少年漫画の差がわかりやすく出ていて笑ったわ。もっとあざとくエロ方向に強い漫画だったら顔面騎乗までいってたんだろうね。スカートで。まぁでもこの漫画はお色気成分はそこまでだしな。そんなに求められてもいないだろうし。
あ、でもお風呂シーンは多かったな。お風呂シーンはあるけどパンチラはない。ってことは、パンチラは裸体よりもエロい、というのが世間的な評価なんだろうか?まぁ裸体といっても大事なところは隠しているから、枠的には裸ではなくて「露出度が高い」というだけなのかもしれない。
ただ、間接的に「大人っぽいパンツはいてるね」などと評価を受けるヒロインの図は、直接パンツを描くよりもよほどエロいのではないかと思う今日この頃。なかなかにフェティッシュ。文乃は比較的そういうネタが多い気がする。
りずは進展ないし、うるかはむしろマイナス
成幸とのいちゃいちゃも一際多い気がする。現時点では文乃がダントツで成幸に近い。りずはなんかもう全然進展していないし。うるかに至っては海外留学。遠距離恋愛はどうだろう、なんて考えているあたりまったく諦めたわけではないのだろうけれど、正直恋愛的には不利に過ぎる。
一般的には、高校生の恋愛よりも自分の才能を高める海外留学のほうが圧倒的に優先度が高いし、自分もそう思うのだけれど、長い長い人生という観点から見ると、これはもうわからないね。特にうるかの場合は成幸と幼馴染でまぁまぁ長い付き合いだし、結婚だって視野に入っているのだろうから、一生に関わるという点では恋愛事情だってバカにできないしね。ってか良きパートナーを見つけるって、才能を伸ばすことなんかよりよほど大事だと考える人、けっこう多いんじゃないかな。
それにまぁ、うるかは距離置こうとしているけれど、本当に深く考えているならば、両立だってできないことはなかろう。婚約っていう手だってあるし。婚約までこぎつければ、成幸はその性格上約束を守るだろうし。だから、気持ち次第というか。
とはいえ、そうするとうるかがあまりにも恵まれすぎちゃうんだよなぁ。自分の才能を活かせる進路にいけて、恋愛も成就、では他ヒロインとの差があまりにも激しい。だから、メタ的な見方ではあるのだけれど、やっぱりラブコメ的には相当厳しい状況だよなぁ。
文乃の話でシリアスモードに突入しそう
実際、自分の興味と才能の乖離で、文乃はすごく苦しんでいるわけだし。まぁこれは家庭の事情も大いにあろうなぁ。人の能力は遺伝によるところが大きいというのは認めがたい真実だけれど、確率論的な面もあるから、数学に才のある者同士の子供だからといって、数理的なセンスがあるとは限らないものね。。。
まぁそれでも環境的には数学者の家庭でかつ、本人に理数系に進む意志があるのだから、親娘がきちんと向き合っていれば、文乃もそこそこやれたんじゃなかろうか。実際、成幸のコーチングが入ってからは少しずつ変わっているはずなのだし。所詮は大学受験程度の話だし。
つまり、文乃の場合根っこには家庭の事情がある。もっと言えば、そこには文乃パパの人生も絡んでる。文乃パパも、天才的だった妻と比較して数学者として凡庸な自分、そんな自分が生き延びたことに引け目を感じているのだろうし、また娘にまったく数学の才覚がないとあって、それは凡庸な自分の象徴に見えてしまうのかもしれない。もしかしたら、文乃パパも努力で頑張って数学の世界に入ったのかもしれんね。そのへんはこの先で描かれるんだろうけれど。
文乃の文系的な素養についてどこまで理解しているかはわからないものの、少なくともそちらのほうが向いていることはわかっているようだし、であれば才ある者はその才を活かすべきだ、というのは彼の人生からくる願いでもあるのだろう(桐須先生と同じだね)。
しかし、だからといって娘の夢を軽んじてよいはずはなく、同情の余地はあるもののまぁクソ親であるので、成幸くんには一発頑張ってもらって目を覚まさせてほしいところである。ここまで拒否するのは、文乃が天体に固執する理由にも一癖ありそうだ。
……とまぁ、他のヒロインズに比べてなかなかに重たいテーマを抱えた文乃っち、この峠を超えると正ヒロイン以外の道はなくなってしまうんじゃないかと思えてならない。ここまでラブコメとして比較的ヒロインの扱いについてバランスよく進んできた本作であるが、果たしてどうなってしまうのだろうか。
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