作・若林稔弥。今回が最終巻。略称が「僕姫」だったと後書きで知る。後書きで略称知るパターンちょくちょくあるわ。
前巻の感想で昔ながらの喜劇みたいって書いたけど、最後までそんな感じだったよ。意図してそうなったわけじゃないと思うけれど、結果的に2時間くらいの演劇チックな作品に仕上がっている。終わりはまさにフィナーレ!って感じでした。
以下感想!
彼女にときめかないという絶望
前巻で正式に王子が真魚と付き合い始めたから、どうなるかと思ったけれど、引き返せる間にちゃんとケジメつけたようで安心。真魚は恋愛脳でうっとうしい性格しているけれど、最初から最後まで徹頭徹尾当て馬だったので同情を禁じ得ない。いい子はいい子だしなぁ。
とはいえ、王子からしてみても、真魚のことを好きになりたい、という気持ち自体は本当だったのだろう。そういうところから始まる恋もあるだろうし。無理だったわけだが。キスする前に素直になれてよかった。
昔三島由紀夫の仮面の告白読んだ時、彼女とキスしても何も感じない自分に絶望する同性愛者の描写がヒジョーに心に残った。彼女にときめかない自分に気づいたときの絶望はなかなかキツイだろう。彼女のほうがしっかりときめいてくれているというのがまた、罪悪感を加速させる。自身に同性愛ではないかという疑念を抱いているのならなおさらだ。
ただ王子の場合、玲良にはときめいていたんだから、少なくともバイセクシュアルということになるように思えるが。いずれにしても、真魚相手じゃあかんかったのな。ここらへんはニヤニヤするというより、ただただ心が痛かったわ。
最後は大団円
最終的に、男とか女とか関係なく玲が好きだという結論に、王子は至る。とはいえ、実際のところ玲は女なので、いかに頭の中で玲を男と思い込んだうえで告白したとはいえ、王子が本当にバイセクシュアルの気があるのかどうか、実際はわからんな。本能的にわかっていたとも取れるし。
ただ、ここはそんな深く考えるところではなくて、なんとなくすれ違っていた男女が、ついにあらゆる誤解が解けて、いろんな人を巻き込んじゃったけれど、最後は結ばれましたよ、めでたしめでたし、大団円!くらいに思うべきところだろう。最後の最後、全員集合してネタばらしの流れは、まさに喜劇のフィナーレだった。頭からっぽにして楽しむエンターテイメントやね。
ところで、菓子家兄妹は結局最後まで本筋にはまったく絡まず、「なんで出てきたの」状態で終わってしまった。実際どうやって絡めるのか不思議だったから、しゃあないな。この二人のノリ自体は好きだったけれど、これがまんま徒然チルドレンの砂川・戸田にいくんだろうし(多分この漫画が先…だよね?刊行年月日的に)、無駄ではなかったということで。徒然チルドレンで一番のお気に入りカップルが砂川・戸田なので……。
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