『ボクガール』11巻(最終巻)感想:身体の性と心の性というデリケートな話を漫画らしくまとめあげた幼馴染もの

目次でネタバレパターンでした。10巻読み終わった時点でなんとなくそうなる気はしていたが…。10巻から出ているのに気づかなくて、10,11巻とまとめて読んだけれど、むしろよかったな。TS系の漫画って初めて読んだので新鮮だったよ。

以下壮絶にネタバレ。

目次

絶対男に戻ると思っていた

正直、マジか!!という驚きでいっぱい。だってこれつまりアレやろ、ちょいと性同一性障害気味の可愛い可愛い男の娘…子が、超常現象で本当に女になってしまって、そのまま自分の意思で完璧な女の子になりました!しかもその理由が、男の友人を好きになったからという。ほほー。

このへん昨今ヒジョーにデリケートな話題になってきた中で、これはすごい結論なのでは。いや少なくとも俺は驚いた。いやでも確かに瑞樹はその仕草やらなにやら、最初からほとんど女の子寄りだったもんなぁ。これは生まれた性を否定したのではなく、心の性を肯定した、というべきなんだろうな。

でもその心の性は、最初から明確だったわけでもなく、決めたのはやはり、猛への恋心。後天的に、瑞樹は自ら性を選んだわけだな。

夢子は最後、悩む瑞樹に対して「私は男の子でも女の子でも…瑞樹君が好き」というけれど、この二つの好きは、やはり明確に質が違う。そしてそのことは、言いながら夢子も、また瑞樹も理解しているはず。違うからこそ、瑞樹は最終的に「女」という性を選択したのだろうし。

でも、そこをあえてぼかして「好き」という表現でまとめたのは、瑞樹の心の内を理解した夢子の優しさであり、後押しだったのだろう。そんな夢子を、「憧れ」だったと認めることは、瑞樹の男だった自分への完全なる決別。

夢子の「誰にも…謝らなくていいんだよ!」は深いな。この子ほんと優しさの塊。

割りきった構成

大事なのは瑞樹と猛と夢子の三人!あとはモブ!賑やかし!超常現象は全部神様の悪戯だから仕方ない!という割り切りがハッキリされていたので、瑞樹の秘密がどんどん周囲にバレ、またアクの強い新キャラが出ても、話の本筋はブレなかったな。

新キャラにそれぞれ明確な役割があって、それが終わってからのモブ化が凄まじい。また話の風呂敷が広がっても、あえて畳まず放置するという思い切った解決。

一応最後には各キャラエピローグでその後が触れられているが、山田でさえ1ページなのに今井先輩が3ページも使って描かれたのに笑った。しかし全体的になんという適当なエピローグ。この適当さがあったからこそ、本筋を真っ当できたといえる。今井先輩のガチな同性愛とか、話のテーマに関わりそうなのに、ほとんど掘り下げなかったのは正解というか、この部分にまで手を出していたら迷走したろうなぁ。

なにげに幼馴染ものでもあった

本筋はあくまで、主人公・鈴白瑞樹と幼馴染のワイルドイケメン・猛と憧れの女の子・夢子との三角関係。その果てに、瑞樹は本当の自分の声に耳を傾けるようになる、そんな話。

性転換は神様の悪戯によるものだし、周囲はそれをさらっと受け入れるし(これはかなりでかい)、ギャグ漫画ベースのハチャメチャな世界観でありながら、瑞樹の心の葛藤そのものはどこまでもナイーブかつデリケートだった。

瑞樹があまりにも女の子っぽすぎて、周囲の否定的反応がほぼゼロだったという点で、性転換ものの話としては出来過ぎかなぁとも思うが、そのおかげで焦点が瑞樹の心の葛藤に絞り込まれている。変にややこしくするより、これはこれでよかったんじゃなかろうかと思う。

ま、なんのかんのいっても、ラブコメだし。ギャグベースだし。この調子であんまり難しい話にされても困るしな。そんでもって、これしれっと幼馴染ものな。この特殊な話についてこれたのは、幼馴染的恋愛譚であったことが俺的には大きいわ。

そして何より瑞樹KAWAII。男か女かというのは重大なことかもしれないが、いずれにしても瑞樹KAWAII。これこそ変わらぬ真理であった。

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