『その着せ替え人形は恋をする』2巻感想:良き出会い

福田晋一, その着せ替え人形は恋をする 2, 2018

表紙はてっきり新キャラかと思ったがヒロインの海夢だった。ほう。

五条くんがめっちゃ頑張る回。そりゃここまでやられたら惚れるしかないですなぁ。

とはいえ実際には五条くんばかりが尽くしているように見えるかもしれないし、まぁ実際労力的にはそうなのだが、それでもこの出会いは海夢よりも五条くんにとって幸運だったろう。苦しい分喜びもまた深い。

以下2巻感想。

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頑張る五条くん

五条くんがエロゲヒロインになりたいという業の深いヒロイン・海夢のために完徹してめっちゃ頑張る巻。若いなぁ。時には無理も悪くないさ。

傍から見ると五条くんの義理堅い頑張りは、海夢を落とすのに十分なもので、まぁ順当に海夢はその好意を自覚するのだが、読者的には「そりゃまぁこんだけ頑張ったんだからヒロインに好かれるくらいの役得はあってほしい」とか「そらあんたは惚れるだろうよ」と、海夢が五条くん好きになるのも納得というか当然くらいの気持ちである。

もっとも、あの頑張りは五条くんにとっては苦しい時間であったのは間違いなくそうだが、つらいというわけではなかったのだろうとも思う。だからこそ頑張れたわけだ。いくら美人のクラスメートとはいえ、それだけではそこまで頑張れるものではない。頑張れたのは、そうすることが五条くんにとって自分のためでもあったからだろう。

良い出会い

五条くんの頑張りばかりが目立ち、しかもその果実はヒロインがいただく、というように見えるし、まぁその一面はあるのだが、それでもなお、この出会いは五条くんにとってこそ僥倖だったといえる。

それは海夢が美人のクラスメートだから……ではもちろんない。たとえ海夢の器量があまり良くなかったとしても、五条くんは頑張っただろう。ではなくて、海夢が五条のことを認めた初めての同年代の、しかも異性というところが大きい

五条くんはずっと、自分を認めてくれる人を欲していた。海夢は五条くんにとって初めての理解者であり、またエロゲヒロインというどう考えても世間受けしない趣味を堂々と好きだと語る姿(たとえそれが、彼女の持って生まれた性格と器量の良さ故だったとしても)に、彼は強い憧憬の心を持ったことだろう。

海夢は五条くんに自信と目標を与えた。彼女は紛うことなき、五条くんのヒーローなのである

認めてくれる人の大切さ

思い出したのは昔懐かし人形漫画、ローゼンメイデンの主人公・桜田ジュンだ。彼は職人肌の芸術家で、服飾に天性の才を持っている点は五条くんと一緒だが、残念ながら五条くんのような良き理解者に"一人として"恵まれなかった。弟想いの姉はいたが、彼女はアートを理解できなかった。親は息子を放って海外に行く無責任ぶりだった(まぁこれは漫画のテンプレートではある)。

結果、彼は中学生にしてヒキコモリになり、かつその性格もねじ曲がってしまった。彼を非難する読者は多かったが、俺は同情的に見ていた。好きなものを好きと言えない、周囲に一人も理解者がいない、その境遇のつらさがよく理解できたからだ(残念ながら俺にはそのような才はなかったが)。

そこで初めて現れた理解者が、生きた人形であるローゼンメイデン第五ドールの真紅なのだが、彼が彼女に惹かれたのは、自分を認めてくれた初めての人だから、というのも大いにあるように思う。

その後、彼はようやくその才を理解する人にも恵まれ、少しずつ従来の明るさを取り戻し始めるのだが、そこに至るまでには長い試練があった。

それを思うと、同じように少女趣味な才と関心を持ちながら、祖父という最大の理解者がそばで見守ってくれていた五条くんは幸運の持ち主だったと言える。そしてついに、同年代で美人の女子にその才を見込まれるのだから、難しい嗜好を持ってしまった者にとって、これ以上の幸運はないと思う。

海夢にとっても

個人的に共感できたのが五条くんなので、五条くん視点の話になってしまったが(というか海夢に共感できる人っているものなんだろうか?)、海夢にとっても五条くんとの出会いはもちろん素晴らしいものだ。彼女が今までつるんできた人たちとは一線を画す、本物の職人と出会えたのだから。

どうしても、海夢のような生まれながらのパリピ的性質を持った人物と、五条くんのような探求者はソリが合わない。彼と彼女を繋ぐのは、なにかを崇高に見ることのできる力であり、その共感である。

それは人間の普遍的な性質の一つではあるかもしれないが、多くの人にとってはそこまで重要なものでもない。なので、美の価値に傾倒するものにとってこの世は決して生きやすいとは言えない(特に日本は先進国ながらいまだに文化的には未成熟なところがあるように感じられるのは何故だ?昔から多くの文化を生んでいる国なのに…)のだが、容姿に恵まれた女性で、気の強い性格の海夢はそんなことをものともしない。

ただ、彼女の周りに理解者はいなかった。彼女の嗜好を理解し、しかも具現化できるような人種は、普段彼女が接する人種とはあまりにもかけ離れている。

なので、五条くんとの出会いは海夢にとってもやはり良いものであり、二人の相補的な関係は、カプ系としてもたいへんよろしいものなので、まぁ折を見て3巻以降もポチろうかな、という感じだ。

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