山本崇一朗, それでも歩は寄せてくる 3, 2020
いいなぁ……。
誰もが羨む彼と彼女の青春に、俺も嘆息してしまう。表紙の彼の目線と開いた手にどうしようもない青春を感じる。
失われた青春、という言葉がふと脳裏をよぎったがそもそも俺にこんな青春はなかった。ないのだが、なんだか妙に近しく感じられるのは、彼と彼女の感情の端々になんとなく覚えがあるからだろうか?感情移入する先が、歩になったりうるしになったり、ころころとせわしなく入れ替わる。
あったような気がするあったらよかった青春とでも言うべきものが、追体験できる、そんな感覚だ。以下3巻感想。
今回も浪漫派
山本崇一朗といえば一番の有名作はやはりからかい上手の高木さんだと思うし、恐らく人気も高いと思うのだが、個人的には本作のほうが好きだったりする。まぁ高木さんはちょっと浪漫強めだしね。いや本作も相当の浪漫派なのだけれど…。
なんだろうね、あるはずない、あったはずはないんだけれど、なんとなく共感を覚えてしまうのは。それはやっぱり、互いにドキッとする瞬間について、なんとなく覚えがあるからだろうな。面白いのは、俺は男だから当然歩に感情移入できて然るべきなのだが、実際にはうるしにも感情移入できてしまう、というね。なんだったらうるしのほうが感情移入しやすいかもしれない。
文化祭を一緒に回ったり、今から告られるんじゃないかと自覚してドキドキしたり……考えてみれば俺にはそんな記憶は……ないようなないような……うん、ないな。
ないのに共感できるってすごくね。まぁでも、人生の中ではなにかしらそれに準じた心の揺さぶりみたいな経験も少なからずあるはずで、その小さな欠片を呼び起こす丁寧な描写が、本作の魅力といえるのかもしれない。
高木さんは非常に第三者的に見ている俺だが、本作についてはなんだか感情移入してしまうのは、何が違うんだろうなぁ。
ちなみに将棋はまったく頭に入ってこない 笑。将棋が好きだったらもっと面白く読めたりするんだろうか。多分そんなことはない気がする。
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