『アパルトめいと』感想:特殊な出会いから普通のカップルへ

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作・犬上すくね。全2巻。1巻2013年、2巻2015年。

安アパートを舞台にした、表題の「アパルトめいと」と「100x200」の2本立て。後者はエロくて微笑ましいダメカップルがイチャイチャしているだけなのに対し、前者はけっこう特殊な恋愛。イチャイチャしているのは一緒だが素直になれない。そしてだんだんと普通のカップルっぽくなっていく。普通→特殊はちょくちょく見るけど、その逆は珍しい気がする。

以下感想。

目次

二本立てだが

話としては2本立てなのだけれど、話はそんなに絡むわけでもなく、表題作の「アパルトめいと」に行き場のない「100x200」をくっつけましたという感じ。100x200はインドアダメカップルが休日に一日中エロエロしてるようなそんな作品で、面白いのではあるけれど、これだけじゃ単行本にはならんよなぁという感じ。といって短編というには話が長い。ということなのかそうなのか、表題作「アパルトめいと」とセット売り。

寝てたらおねーさんがやってきて

話の筋は、売れないライターが家で寝てたらおねーさんがいつの間にか同じベッドに同衾、その後なんやかんやあって逆レイプ気味に性的な関係へ……という(ある種の)男の夢を具現化したエロ漫画みたいな話である。が、この女・梢がなかなかの曲者で、男・雨宮工を性具扱いし、完全な主導権を握りたがる……ってこれも文章で書くとエロ漫画みたいだ。

けれど、工は別にMというわけではない。工の梢に対するファースト・インプレッションが、梢の睨み顔が忘れられないというものなので、Mっ気がないわけではないのだろうけれど、その後の梢に対する接し方、笑顔を見て喜んだり、たいへんな時には慰めたりなどを見ていると、もっとピュアな感情であろうと思う。

また、梢が工に対し優位に立ちたがるのは、信じていた元カレに三股かけられたというトラウマが元であって、別に元からSな性的嗜好を持った女というわけではない。出会い方、出会ったタイミング、工の性格、梢の置かれた状況など、色々な要素が相まって、このような立ちる振る舞いになっているのだろう。

決して変態カップル爆誕という話ではなく、あくまで特殊な出会い方をした彼と彼女のロマンスである。特殊な出会い故に、変態チックな関係になった彼と彼女が、少しずつ普通の男女らしい関係になっていく様が、たいへんラブコメ的でよろしい。

妙な組み合わせのカップルであり、性格的相性がいいのかどうか、よくわからない。梢が寄りを戻そうとする元カレについて、相性はよかったんだよな、と再認識するのは、工との関係があるからだろう。梢と工の相性がいいのかどうかは確かに微妙。

けれど、梢にとってありのままの自分を受け入れた工がかけがえのない存在で、また工にとっても、梢は先の見えない生活の中で突如差し込んだ太陽のような存在だったのだろう。あの日あの時あの出会いという巡り合わせで生まれた、運命的とも言えるカップルの誕生話であった。

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