作・ひな姫。1巻完結のオムニバス形式男の娘増殖漫画。
表紙(テキトーに検索してくれ)からして既に相当きているが、内容はもっときている。主人公の男の娘・天原雪乃が、毎話好みの男の子を見つけては男の娘にしていくという狂った漫画。
にも関わらず、話のベクトルは意外とお涙頂戴なほっこり癒し系ストーリーで、思春期のナイーブな男子の悩みを解決していく、不覚にも一時の幸せを味わえるラブ(?)コメだった。ただし、悩みの解決方法はすべて「男の娘になって自分を解き放て☆」うーん狂ってる。
以下感想。
(追記)Twitterで作者さんにコメントいただいていました…こんな場末のサイトにお越しいただき恐縮です。楽しい作品ありがとうございました。男の娘もの初心者の自分にも楽しめました。世界平和でしたよ。m(_ _)m
男はつらいよ
男の娘・天原雪乃が同士を増やしていく男の娘増殖漫画。毎話一人ずつ男の娘が増えていく様は狂っているの一言であるが、読んでいくうちに、最初に出てくる男子を見て「ほー、今回はコイツが男の娘になるのか…」とニヤリとしている自分に気づいて嫌になる。
ぶっ飛んでいる設定の多い萌え漫画界の中でも相当ぶっ飛んでいると思うが、読後感は良く、案外あっけらかんとしている。というのも、天原君は強制的に男子を男の娘にしていく変態であるが、その過程でナイーブな男子たちの誰にも言えない悩みを解決していくからである。
その悩みは、作り笑顔でみんなにいい奴だと思われているが、実はただの八方美人でそんな自分に疲れているとか、友達だと思っていたのに陰口を叩かれているのに気づいたとか、あがり症で大事なところでミスをするとか、スランプで勉強できないとか、どれもありがちな思春期の悩みではあるが当人にとっては深刻なものである。
そんな思春期の男子の悩みを綴った漫画など腐るほどあるが、それらの悩みを「女装で解決!」は他に類を見ないというかあるわけない。ここがおかしい。狂ってる。
しかし、そんな狂った流れを見ていてふと脳裏をよぎったのが、「男はつらいよ」という、おおよそ男の娘のイメージとはかけ離れたあの映画のタイトルである。この漫画の男子で悩みを吐露する男子に共通しているのは、皆人に相談することができない、ということである。
悩みを溜め込むのは、男のほうが多いだろう。男子たる者泣き言を言うな、人に弱みを見せるな。そういう価値観は、現代でも色濃く残っている。そんな彼らが、女子に変身することによって悩みを吐き出せる、また自分を解放できるようになるというのは、恐らく作者の意図したことではなかろうが、なかなか示唆的である。
……ま、それも彼らが「可愛い」からだけどね。
男の娘と女装男子の狭間で
二次元であるので、見た目はどう見ても女子であるが、一応男同士という設定なせいか、露骨に性的であるにも関わらず、不思議とあまりいやらしさを感じない。それは恐らく、どうもみんな、同性愛者というわけではなさそうな感じがするからだろう。したがって、実は男の娘というより女装男子というべきかもしれない。なんだかんだいいつつ、全員、将来は普通に女性と結婚して家庭持ちそうだなぁという気がする(女装は人に言えない趣味として)。
もっとも、天原とその幼馴染・月野の話だけは、やや特殊ではあった。二人はキスをするうえ、月野の男の娘化の過程も、特に悩みを解決とかではなく、ただただ天原が男の娘になった月野が見たいだけであり、他の話と比較したとき、ひときわ性的・恋愛的なものを感じさせる。一番純粋に男の娘っぽい話だったかもしれない。何故か男の娘ものと幼馴染ものは相性が良いようである。
しかし、月野との関係が他の話で取り沙汰されることはないので、やはり行き過ぎた変態同士の嗜みくらいに思ったほうがよいのかもしれない。
男の娘と女装男子の境界線は曖昧であり、明確なラインを引けるものではないが、この漫画は特にその曖昧なところを幅広くカバーしている。話の明るさもあいまって、男の娘の可愛さを、深入りしすぎず、存分に楽しむことができる作品に仕上がっているのではないだろうか。
最後の男の娘だけの雛祭りは、いい感じに狂っていた。
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