作・板倉梓。2011年全2巻。
理科教師が国語教師から読解力を学ぶ話。ラブはそこそこあるけれど、どちらかというと友情の話がメイン。
この作者さんは暗い話と明るい話の両方を書くので、どちらかなぁと思いながら読むのだが、本作はどちらかというと、明るい……わけではないかもしれないが、少なくとも後味の悪い話ではない。タイトルと表紙の感じから、暗いほうかなぁとも思っていたので(だから積読期間が長かった)、よかったよかった。
以下全2巻感想。
読後感爽やか
とりあえず、読後感の良い話である。よかったよかった。この作者さんは、普通に後味悪い作品書くこともあるしね。タイトルと表紙の雰囲気的に、暗いほうの話かなーとちょっと思っていたんだけどね。それで、けっこうな期間積読していたわけだが。歳取るとハッピーエンドしか読めなくなるんよ……。
話はけっこう群像劇的で、2巻という短さにも関わらず、特に話の本筋には関わらない1話読み切りなどもあり、けっこう雑多。女教師にいいようにされそうになって思春期を爆発させる男子の話とか、ほんとにただの短編という感じ。物語の雰囲気作りに貢献しているとは言えるかもしれない。
ザ・理系
本作は恋愛要素はあるものの、どちらかというと友情の話である。親友を失ってから、時が止まってしまった主人公・暁先生が、親友との思い出の町に来て、再び時が動き出すまでの話。
暁先生は理科の先生で、目に見えるものを理系らしく科学的に捉えるが、あまり行間や言葉の裏を読むのは得意ではないらしい。ホタルは何で(何のために)光るのかと問われ、ルシフェリンという発光物質があり〜とメカニズムの性質を説明してしまう、典型的な理系である。
そんな彼女は、亡き親友の「帰りたいとこなんかない」と異国の死地に墓を作った言動が理解できず、いなくなった親友を求めるように、動物の亡骸を集めるようになってしまった。
その親友の言動を、暁先生に思いを寄せる国語教師・橋本先生が解き明かしてしまう。帰りたいとこなんかない、墓は死んだところでいい、その意味は、亡くなった後の自分の体はどうでもいいということ。親友の死以来、ひたすらに動物の死体を集めてきた自分を否定されたように感じた暁先生は、その時は激昂してしまうものの、時間を置いて心の整理がある程度つくと、橋本先生にその先の解説を求め、理解する。親友は早く体から抜け出したかった、それは心が自由になるということ。いつでもどこでも、一緒にいるんだということ。
……うむ……。別に解釈自体に文句があるわけじゃないんだが……というかそのとおりだと思うし……。ただこの話をまとめると、冒頭に書いたように、理科の先生が国語の先生から読解力を教えてもらう話、という身も蓋もない言い方が出来てしまうような気がする。
もちろん、町での生活や、橋本先生の暁先生を思いやる気持ちがあったからこそ、暁先生は橋本先生の解釈を受け入れ、前に進むことができたのは確かだろう。そうなんだが……うーん、なんだろう、やっぱり、暁先生は自分でその答えに辿り着かなきゃいけなかったんじゃなかろうか。ほとんど橋本先生に答えを教えてもらってるもんなぁー……。
話の雰囲気はいいと思うし、理系と文系の話っていうのも嬉しいんだけどなー……。暁先生にはもうちょっと頑張ってほしかった。ラブコメ的にも、そのほうがおいしい気がするしな……。まぁでも、明るい話とは言い難いかもしれんけれど、前向きな話で読後感はよかった。