『湯神くんには友達がいない』9-12巻感想:普通の人なんていない

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作・佐倉準。2017年12巻。やっと追いついたと思ったら新巻でているんだからもう。

そしてなんだか随分とラブコメしていてびっくりだよ。となりの関くんみたいな表紙しやがって…。ちひろがこんなに可愛くなるとは思わなかったなぁ。そして強くなったなぁ……。

話としては、湯神くんについてはあらかた語ってしまったからなのか、主に周囲の人物の身勝手さがよくわかる話が多かった気がする。まぁ湯神くんがおかしいのはいつものことだしね。

普通の人たちは、普通におかしい。皆なんだかんだと自分勝手。自分の都合を優先するあまり、他人の気持ちにまで頭が回らない。そんな様子を見ていると、一周回って湯神くんが一番まともに見えることもあるのだから、少年漫画なのに妙に示唆的な漫画である。実際この漫画で人生勉強している子どもたちもそこそこいそうである。

以下9-12巻感想。

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普通の人の普通の身勝手

面白いなこの漫画。湯神くんについては一通り語ってしまったからなのか、どちらかというと周囲の人間たちの身勝手さがよく表現されていた気がする。一周回って湯神くんが一番まともに見えることがあるのがすごい(まともなわけないのに)。

たとえばちひろに一方的な告白をしたえーとあの、どっかのエース。湯神の幼馴染の。名前忘れたわ。まぁいいや。アイツ。アイツなんてもう典型的で。

一方的な告白からの一方的な勝負、一方的な約束、それで優勝したら一気にモテて、一方的にちひろに振ったアイツ。これだけ書いたら、ほんと自分勝手の権化だよなと思う。実際、単発の失礼さで言えば作中でも随一だ。一方、面倒見の良い先輩でもあり、後輩たちからの人望はあるっぽい。人間、色々な面がある。

あ、名前思い出した。確か林田だっけか。「俺はもうみんなの林田なんだ」って背を向けるシーンを急に思い出してなんか腹がたった 笑。

それと、門田。湯神の正捕手。そう、正捕手 笑。この子が一番おもしろかったなぁ。湯神に面倒かけられてたいへんな後輩、って感じだったのに、何かと湯神をくさしながらも、なんだかんだ慕っていたところもあるのか、勧誘チラシの件で湯神に褒められたら、もう嬉しくて嬉しくて舞い上がっちゃって、頑張りすぎるっていうね。

それで、生意気な一年帽が敵意をむき出しにしてきたら、受けて立ち、挙げ句今度は派閥を作り始めるわ、自分のほうが湯神を理解している、正捕手に相応しいと青筋たてて張り合うわ。ああ、こうして社内政治や政局が生まれてしまうんだなと、実によくわかる。学校は民主主義の縮図だね。一方の湯神はどこ吹く風の台風の目っぷり。

あと野球部のマネージャーの、元キャプテンが好きだったほうとか。ちひろの友達の。名前忘れた 笑。急増した後輩の扱いがわからず、うまく振る舞えなかったのは未熟さ故の仕方ない。が、ちひろと湯神が絶交した件で、湯神の調子がおかしくなったのではないかと疑った時に、エースの不調は困るということで、ちひろがもう怒ってないと聞くと、ちひろの意思も確認せずに即座に湯神を呼んで仲直りさせようとしたのは、まぁ軽く彼女の身勝手さが出ていたなと思う。

とはいえ、彼女は作中の人物の中では常識人だ。だから、その後にちひろが湯神のことを意外と大事に思っていることを知り、対応を少し改める。ここで、彼女がちひろの湯神に対する態度を意外に思うのは、満たされた学校生活を送っているからだろう。

ちひろは確かに、色々なところで湯神に迷惑をかけられているが、どちらかというと、それ以上に助けられ、勇気をもらっているクチ。それが彼女にはなかなかわかりづらいことだったらしい。それでも、最初の頃、友人が出来ず孤立していたちひろにとって、精神的な助けになっていたのではないか、というくらいには想像力を働かせるので、作中でも共感力の高い人間と言える。

そんな彼女が思わず身勝手になってしまうのは、それだけ部のことを考えていることの裏返しでもある。つまり、彼ら彼女らの身勝手さは、一人ひとりの個性であり、人間らしさという一面でもあるのだ。湯神くんほど強烈ではないだけで、普通の人は、普通におかしい。誰かを普通だと思えるのは、単にその人をよく知らないから

逆に言うと、湯神くんのことをよく知らず、表面だけ撫でると、素晴らしい人格者だと勘違いすることもあるわけだ。というか、作中の教師や藤沢さんなんかがそうだね。藤沢さんは、変な蟠りを捨てれば、多分湯神と仲良くなれるタイプなんだろうけど 笑。

なんだかんだラブコメってて驚き

ってか、最初の頃はちょっとウザいくらいだったちひろがすこぶる可愛くなっている。まぁ、彼女強くなったしね。なんだかんだで手芸部に自分で居場所を作ったし。これまで頼ってばかりだったけれど、今や頼られる側で、なんだったら湯神が(彼自身意識せずとも)抱える問題を助けることもあったり。物置にされたり。

特に湯神に対する「絶交」宣言は、彼女の成長を物語っていて感慨深い。激昂したちひろに、部室を閉め出された湯神は、「切るほどの縁もないでしょーに」なんて毒づきつつも(逆に言うと、ちひろ的には切るほどの縁があったということか)、それは彼の行動に影響を及ぼした。

あの湯神が、野上に対してフォローになっているんだかなっていないんだかわからない自説を解き、占いを学ぶ過程で得られたものを応用して、自分なりのルーチンを手に入れることができた、とわざわざ礼を言いに行ったのは、まさにそれだろう。占いとルーチンを繋げるのは、一つのことに没頭する彼らしさだが、わざわざ礼まで言いにいったのは、野上を泣かせてしまった引け目はもちろんあるけれど、ちひろに怒られたことを、彼なりに気にしてもいたから、と思う。

ちひろが怒った理由を湯神は理解したし、ちひろもそれは理解した。だから、野上に礼を言う姿だけで、ちひろにとっては十分だったんだろう。あのシーンは……うん、良かった。ラブコメ的にも、よかった。

うーん、正直ラブコメとしてはこの漫画、あんまり期待していなくて、まぁでもこの二人好きな人はけっこういるかもなー、くらいだったのだけれど、気づけば俺もだいぶ好きになっている。ちひろが強くなって、湯神にも早々負けないくらいになったからかなぁ。この二人の関係は、煮干しのように噛むほどに深い味わいがある……。表紙もなにげにラブコメラヴァーズ的に嬉しい構成が多い……。

湯神くん、受験が終われば彼女はいてもいいと思っているようだし。そりゃね、子孫繁栄しないと人類滅ぶからね。合理的な彼でも、恋愛を否定することはできまいね。ラブコメは科学的に必要だよね。黙れ。一人サイコー。

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