『おと☆こい』感想:やはり男の娘は異性愛に近いのだろうか

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作者・とめきち。男の娘短編集。いろんな男の娘の話が楽しめて初心者の俺にもとっつきやすかったよ。みんなナチュラルに性対象が男で俺の中の何かが狂う。一方で男であるが故の葛藤も見モノである。

Kindle Unlimitedで読み放題対象だった。オススメ。以下感想。

可愛ければ男でもいい!からの男が好きじゃなくて君が好き

いろんなお話が楽しめたけれど、男の娘愛は性を超越するところにポイントがあるのだろうかと思った。

まず最初に、「可愛ければ男でもいい」から入る↓。

おと☆こい, とめきち
とめきち, おと☆こい

このシーンは実に端的だ。男でもこんなに可愛いなら問題ない。いくら可愛くても諦めるが普通だが、その普通から突き抜けることがまず第一の壁といえる(多分それは心に闇が必要だ)。

本作は全体的に純愛話が多く、かつ男の娘側は暗黙のうちに性的対象が男(あるいは両方かもしれない人もいる)なのだけれど、この話は例外。男の娘はどちらかと言うと無理やり押し倒されていて、性的対象が同性か異性かも判然としない。ただいずれにせよ、相手の男に好意を抱いていない状態で、これはなかなか……エロい。この二人の元の関係はいじめっこといじめられっこであり、関係性の逆転という要素がエロスを生んでいる。

ただ、この話は女性の代替の面が強く、もちろんそれも男の娘のいち要素ではあるだろうけれど、まだまだレベル1じゃなかろうか?多分その先にあるのが、性を超越した愛↓。

とめきち, おと☆こい
とめきち, おと☆こい

「ちーだって男が好きなわけじゃないよ 幸成くんが好きなんだ」

男が好きじゃなくて、君が好き、は多分一つの究極なのだろう。そこに至るまでの過程は、そこらの純愛系よりもよほど純愛的。可愛ければ男でもいいwからの、君だから好きなんだ、にいかにして進化させるか。

しかし、性を超越した愛とは言ったものの、男の娘に女性よりも女性らしい容姿は必須の条件だ。生物学的な性が女性でないにも関わらず女性的であるとは、究極の女性を求めているという見方もできるように思う。そんなわけで、やはりベースは異性愛なんじゃないのかなぁとも思ってしまった(本質が同性愛じゃないからこそ、俺にも読めたんじゃないかなぁ)。

男であることのコンプレックス

男の娘もののもう一つ大きなハイライトは、身体の性と心の性の乖離からくる葛藤だろうか。そういう話もちょくちょくあった。前述の男の娘愛と合わせると純愛になる↓。

とめきち, おと☆こい
とめきち, おと☆こい

自分が男というだけで彼女になれない……なんか至極当然のような気がするけれど、そこを当然としないのが男の娘ワールドである。ここから、男でもいい、君が好き、というある種究極の純愛に突き抜けるのが男の娘。こういう葛藤は普通のラブコメにはないので、男の娘ものでは定番なのだろうけれど、俺にはなかなか新鮮だった。

一方で、葛藤そのものが膨れ上がった結果、魔性の男の娘になってしまった子も……↓。

とめきち, おと☆こい
とめきち, おと☆こい

彼女がいる男を寝とるのが趣味の男の娘。そうすることで、自分の中の空白を埋めようとしている、なかなか面白いキャラクター。本作で一番印象に残ったかも。こういう子の純愛もみたいねぇ。浮気なんかさせて、傍若無人に振る舞っておきながら、自分を選んで「くれる」、魅力を感じて「くれる」という言い方に、根底にあるコンプレックスを感じずにいられない。

こういう葛藤って、いわゆるゲイとは違うよな。ゲイは彼女になりたいわけじゃなかろうし。男の娘は、男でありながら、女のポジションにいこうとしている。後天的に「女を選択」させることで、純粋理想的な女性を目指すって感じだ。やっぱり、同性愛って感じではないなぁ。

もうちょっと色々読んでみようかな。