『働かないふたり』8巻感想:失った感覚を思い出させてくれる

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本作は疲れた時に読みたい漫画の一つ。童心を思い出させる。相変わらずゆるりとした時間を過ごしており、たいへん羨ましい。

しかし、漫画と違い現実は間断なく時が流れる。将来はやってくる。この二人のように過ごすことはできまいな。読んでいると、時々、ものすごくやるせなくなる。「幼少期のふたり」はほっこりしたけど何か切なさも感じる。

一応ラブコメっぽい展開としては、兄貴が美術館で女性とニアミス。別にこの漫画にロマンスなんざ求めちゃいないが。何かきっかけがあるといいね。以下感想。

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懐かしい感覚

今回も相変わらず。このニートたち、俺より交友関係が広いでござる。この二人といると落ち着くやろなぁ。倉木さんとか二人が働き出して去っていく夢を見てうなされる始末。重症。倉木さんは二人のことを決して見下しているわけではない(見下していたら自分から去っていく夢でうなされるなんてなかろうし)。見ていて安心する二人なんだな。わかるよ。

なんかこう、懐かしい感覚を思い出させてくれるものな。今回やたらうんこネタ推しだったけれど、それだって小学生的な感覚だしね。カフェのジュース一杯450円に愕然とする春子っていうネタも、学生時代の感覚だなって。

うん、修学旅行とか、観光地に行くと、あらゆるものの高さにびっくりしていたよ。今となっては、なんとなくそんなもんかなという風に感じているけれど、でも確かにそうだった。機械化、システム化の恩恵をフルに活用した、スーパーやコンビニに並ぶ大量生産の消費物が安すぎる、ということを斟酌しても、あれは雰囲気代とか、洒落乙代的な諸々も含まれているかんね。純粋な人件費だけじゃない。そこに価値を見出すのは、確かに大人の感覚だ。でもそれが、純粋にものの価値と言えるのか、っていうと、それはわからんね。

この漫画、そういうのが多いんよな。妹だけじゃなくて、兄貴もそう。スウェットで美術館に入って絵を見ているのを、オバハンに陰口叩かれるという話があるけれど、その様子を見た女性は心の中で評する。

「大事なのは絵を見たい気持ちじゃない しゃべってばかりのあの人達より よっぽどこの場にふさわしいわ」

間違いなく一面の真理だ。見栄えや体面を気にする大人と、本質的な中身を重視する子供、という対比がこの漫画には実に多い。それでいながら、見栄えのよい大人に対する憧憬もまた、主に春子の友人・ユキちゃんを通して同時に描かれる。

、見栄えがいいとカッコイイし、なにより大人にならなきゃ現実問題生活できんし。だからみんな、色々なものを犠牲にして大人になっている。それが本能的にできないのが妹の春子であり、すべて理解したうえで意識的に拒んでいるのが兄貴なのだろう。一緒にいると、自分が失ったものをこの二人の中に見出して、落ち着くんだろうな。

ところで美術館の女性、兄貴となんかあったっぽい人だけど、なんだっけ?元カノだったけ?あまり覚えていない。親父の会社にもいるよね。関係性忘れたわ。ラブコメの匂いはするけど、この漫画じゃそういうのは期待できんのやろな。いや別に期待しているわけではないのだけれど。

なんだかんだで仲の良い家族

親父といえば、家族関係についても、働いていないという社会的重罪を犯しているにも関わらず、石井家はどこまでも仲が良い。石井父の会社で、高いマッサージチェアを買ったという自慢をする同僚に、石井父が「うちはずっと娘に肩をもんでもらうだけだなあ」と返し、それに対して「オレに優しくしてくれるのは機械だけさ。30万払うから娘に肩もんでもらいたい…」と同僚が気落ちする様など、笑いを通り越してただただ切ない。

本当に大切なことってなんやろな、とか、そんなようなことをこの漫画読んでいるとつい考えてしまう。この二人は、俺よりよほど人生を謳歌しているように見える(そして実際楽しんでいる)。

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