『ビッグオーダー』感想:妹>世界のシスコン物語

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作・えすのサカエ。2016年全10巻完結。

積読状態になっていたのを、一気に読み直した。

これは……兄妹ものだなぁ。ラブコメ的な面白さはあるけれど、それよりなにより兄妹ものだなぁ。星宮エイジと星宮瀬奈、この二人の物語だ。最終巻の表紙で、エイジと抱き合っているのが、ヒロインの鈴でも壱与でもなく瀬奈というところが、話の内容を実によく物語っている。この漫画の真・ヒロインは、妹の瀬奈やね。

うーん、しかし、個人的にはその枠を超えてほしくもあった。以下全10巻感想。当然ネタバレ。

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妹一筋のお兄ちゃん

兄妹ものだなぁ……と、読み終わって思った。最後の兄妹対決では、瀬奈はエイジに自分を殺させることで、救世のヒーローにしてエイジに居場所を作ろうとした、ということが明らかにされる。

うーん……まぁ、瀬奈の意図は多分そんな感じなんだろうなというのは、読んでいて予想できたことだ。だからまぁ、最終巻の展開は、順当ではあるものの、個人的にはもう一枚上にいってほしかった。未来日記の作者さんだけに。初期作品の花子と寓話のテラーも、最終巻はもっと先を読ませる勢いがあった……。

話自体は一貫してはいた。この話は、星宮兄妹の物語だ。エイジは最初から一貫して、妹の瀬奈一筋、これが彼のアイデンティティである。展開によって、主人公のエイジは時には魅力的に、時には鬱陶しく見えたが、それは妹の瀬奈を護りたいという強い想いが、その時々の状況で第三者的に見え方が変わったからだろう。

たとえば最初、柊にしてやられて傀儡状態だった時は、瀬奈を助けるんだ、という想いは、人間的に魅力を感じられた。一方、中盤以降の、瀬奈がまるで正気を失ったかのように大暴れして、世界と妹どっちが大事なの、みたいな状態になってなお、瀬奈大事さに色々な人を巻き込んだ時には、読んでいてひどく鬱陶しく思えたものだ。

しかし、最初からずっと、エイジは変わっていない。徹頭徹尾、瀬奈第一主義であり続けた。それがエイジの生きる理由だったのだろう。そして、そんな重たい兄貴の気持ちに、妹の瀬奈もまた精一杯答えちゃうんだわ。妹もシスコン兄貴に負けず劣らず、自分の世界がお兄ちゃんでいっぱいなブラコン妹なんだわ。

言ってしまえば、世界を巻き込んだ壮大な兄妹喧嘩。しかも喧嘩の内容は、愛しているが故に自分のための犠牲になんて絶対にさせないんだからなという、互いを思いやっての喧嘩。「自分のほうが愛している!」で言い合いになっているラブコメバカップルのようだ。

色々な登場人物が出ていたけれど、どこまでもエイジと瀬奈二人の世界であった。

ラブコメ的には残念

そんな仲の良すぎる兄妹二人であるけれど、別に禁断の愛というわけではない。あくまで家族愛の枠組みである。だからエイジは、鈴を初めて見たときには好きになっているし、壱与に想いをぶつけられた時にはまんざらでもない感じになっている。

…のだけれど、それも瀬奈への想いに比べればどうというものでもなかった。これを残念に思うのは、俺がラブコメ脳だからなんだろうか。しかし、家族愛では中々盛り上がれないなぁ。エイジが鈴や壱与ともっと深い関係を結べば、世界は広がったと思うんだけれどなぁ。

それとも、星宮兄妹の愛がストレート過ぎて、最初から最後まで、二人の関係自体は本質的に変わっていないんじゃないか、と思えるところがよろしくないのかもしれない。未来日記の天野雪輝と我妻由乃は、二人が本当に互いを愛し合うようになるまでが描かれ、特に最終巻の怒涛の展開は劇的だった。一方この漫画の星宮兄妹は、物語最初の時点で、既に十分互いを思いやっていて、まぁ最後より兄妹の絆は深まったと言えるだろうけれど、本質的な関係性はあまり変わっていないように見えるんだよなぁ。

だからやっぱり、エイジは鈴や壱与と関係を深めてほしかったと思う。実際、この漫画で一番楽しかったのは、エイジ・壱与vs神魂命戦であった。これは、二人が互いに信頼関係を結んだ話で、やはり関係性の変化こそがラブコメの真髄なのだなぁと思う(その意味では、エイジとよりも、鈴と壱与の関係のほうが面白かったかもしれない…)。

まぁ、あの話は神魂命のラブコメ脳が共感出来すぎたのが単純に面白かったというのもある 笑。

神魂命「初々しい!初初しいわーーー♡
愛する人の役に立ちたいというその想い♡
ああ 縁結びの冥利ここにありよね…っ!」

超わかってつらい。そしてこれ↓。

えすのサカエ, ビッグオーダー, 4巻

うん、こういう顔になるよねわかる 笑。

このエピソードがよかったので、自分は鈴より壱与派。エイジの昔のラブコメチックなエピソードに対する壱与の感想「それは自意識過剰です」は、流れといい壱与の表情といい完璧。ライバルの鈴に、恋に恋していると言われた時には、壱与は自分が求めているのは恋なんてものじゃない愛だ、という反論になっていない反論をしていたが、なんとなく鬼気迫る勢いがあった。このなんとなく鬼気迫る感じが実に作者さんらしくてよい。まぁ鈴の言う通り、恐らく最初はそうだったのだろうと思われるが、キッカケなんてどうでも良いというのは、ラブコメセオリーの一つであり、また未来日記で描かれたことでもある。

パワーある

とまぁ色々と愚痴愚痴書いたが、一気読みする勢いと面白さはあった。なんだかんだ、パワーのある漫画と思う。未来日記が圧倒的過ぎたので、期待値が上がってしまっていたのかもしれない。まぁ、本当にラブコメ展開炸裂したら、ご贔屓の壱与がラブコメ的に敗北した気がしてならないので、夢が保たれたという意味ではよかったか。占いが当たることを祈るぜよ。

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